幾何学のカタチが基本形となって、単純なつなぎ模様として生まれた「文様」。世界各地で生みだされた文様は、その国や土地によって色んな意味を持っている。そのルーツは、普段の生活の中でなにげなく描かれた線がはじまりとされている。人類共通の装飾本能から、衣服や食器、住まいの内装品などにそうした文様を描いて、装飾をほどこしたのだろう。日本では、文様を中国や朝鮮との交流の中で取り入れ、おめでたい時を飾る文様として、独自に発展させていったと考えられる。代表的なのが亀甲の文様で、日本の文様のルーツと言われる西アジアでは何か神秘的な意味合いを持ち、日本では正倉院の宝物にも用いられている。その後も、日本では亀は吉祥のイメージで好まれている。また、松竹梅はおめでたい組みあわせの代表である。梅は寒さのキビシイ季節に花を咲かせ、松と竹は冬に緑を保っていることから、清廉さを象徴していると言われる。このように、文様と文様を重ねることで、昔の人はめでたさを表現していたのである。ちなみに、有職文様とは、平安時代以降、家格や伝統に相応して、公家の装束や調度品に付けたとされている文様のこと。文様の知識はちょっとムズカシイかもしれないが、どの文様にどんな意味があるのか、自分の好きなパターンは何なのかを知っておくと、着物や小物を選ぶ時に楽しさが広がる。
 

【青海波】せいがいは
青海波は、書いて字のごとく、青い海原の大きな波を表現している。日本だけでなく、エジプトやペルシャなど、世界各地で見られる文様。日本でも古くから着物の柄として用いられたが、実際に水を表現する文様として登場するのは、鎌倉時代の古瀬戸瓶子からとなっている。名前は、雅楽の舞曲からつけられたとされており、源氏物語でも、源氏が頭中将と「青海波」を舞う場面が描かれている。
菊青海波
(きくせいがいは)
青海波
(せいがいは)

【立 涌】たてわく
立涌は、水蒸気がゆらゆらと立ち涌いて登っていく様子を文様にしたものとされている。平安時代以降には、波形の曲線がふくらんだところに、雲や波、藤の花などを入れて、雲立涌、波立涌、藤立涌といった文様がつけられた。これらは有職文様として、能の装束などにも用いられている。ほかにも、ブドウの房を入れたもの、立涌がきれぎれになって模様になっているものなど様々なバリエーションがある。
桐立涌
(桐たてわく)
桜立涌
(さくらたてわく)

【亀 甲】きっこう
正六角形の幾何学の文様。亀の甲羅のカタチに似ていることから、この名前が付けられた。もともとのルーツは、西アジアに起こり、中国や朝鮮から日本に伝わったとされている。これも有職文様とされており、おめでたい文様の代表格。組みあわせがしやすいからか、様々な変形の亀甲文様がある。正六角形が連続模様になっているもの、亀甲の中に花や動物、文字などが入れられたものなど。
毘沙門亀甲
(びしゃもんきっこう)
亀甲花菱
(きっこうはなびし)

【籠 目】かごめ
竹カゴの規則正しい編み目を文様にしたもの。葦や柳、カキツバタや椿、水鳥など、水辺のものとの組みあわせが多く見られる。そんな図柄があったら、住まいの中の竹カゴを利用した小物のコーディネイトの参考にしてみたい。また、編み目のひとつを紋章化した正三角形を上下に重ねたカタチは、邪を払う力があるとされ、魔よけのしるしに使われることもあった。
籠目(かごめ) 籠目(かごめ)
※基本的な形

【 菱 】ひ し
ふたつの平行線が重なってできた菱形が基本の文様。縄文時代の土器に、すでに文様として描かれているほど、古くから用いられている。菱形が連続して重なるのを入子菱、四つの菱形の組みあわせでつくられる割菱、唐花で構成される花菱(松本幸四郎や市川染五郎の家紋である)など、多くのバリエーションがある。また、在原業平の業平菱は雅な意味を持つとされている。
入子菱
(いれこびし)
四花菱
(よつはなびし)

【三崩し】さんくずし
和算で用いられた計算の道具で算木文(さんきもん)というものがあり、それを崩したようなカタチをしていることから、「算崩し」「算木崩し」と呼ばれていた。次第に、三本ずつ縦横に石畳のように配列したので、「三崩し」、四本のものは「四崩し」と呼ぶようになった。また、網代に組んだ模様とも似ているため、「網代組み」とか「網代文様」とよばれることもあるが、同じ文様のこと。
五崩し
(ごくずし)
三崩し
(さんくずし)

【 点 】て ん
小さな点をすきまなく構成した文様で、大小の点による「霰(あられ)文」、絞り染めしたポイントが点となる「鹿子文」、鮫の皮のように細かい点を並べた「鮫小紋」ほかにも「行儀小紋」など、バリエーション豊富な文様だ。ちなみに鮫小紋は、名前こそ小紋の名前がつくが、遠くから見れば無地に近い着物であることから、小紋ではなく格式の高い無地の着物の扱いになる。一枚持っているとオールマイティーに使えて便利。
鹿子(かのこ) 鮫小紋
(さめこもん)

【 縞 】し ま
日本に縦縞がやってきたのは、南蛮貿易によって南方諸島の縦縞の木綿が持ち込まれた時がはじめて。それまでの日本の生地には縦縞はほとんど見当たらず、横縞が「筋」と呼ばれて使われているくらいだった。江戸時代の文化・文政の頃に、単純で明快な縦縞の柄が人気となり、江戸の粋を表現する代表文様となった。南方諸島から伝わったので当初は「島」の文字が使われていたが、その後「縞」の字が当てられるようになった。
片滝縞
(かたたきじま)
両子持縞
(りょうこもちじま)

【 鱗 】うろこ
正三角形か二等辺三角形を重ねたもの。単純明解で描きやすいからか、世界各地で見られる伝統文様である。日本でも、古くは古墳の壁画などにも描かれている。魚のうろこに似ていることから、この名前が付けられた。着物や陶器などでは、地紋としてよく用いられる。また能や歌舞伎では、鬼女やヘビの化身の衣装に使われているので、注意して舞台の衣装を見てみよう。
鱗(うろこ) 鱗(うろこ)

【市 松】いちまつ
正方形を交互に敷き詰めた入替の文様。市松とも石畳とも呼ばれる。これも単純な構図なので古くから用いられ、工芸品や染織品、桂離宮の襖のような室内装飾にも用いられている。市松の名前は、江戸時代の歌舞伎役者・佐野川市松が愛用したから。視点を変えれば、ギンガムチェックである。もちろんヨーロッパでも昔から色々なものに用いられてきた伝統の文様だ。洋服にも使われている。
市松花菱
(いちまつななびし)
市松(市松)


Copyright(C) tachiichi co, ltd.
All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.